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21/4/24 濱口竜介監督 Zoom講座「映画の観方」に寄せて

2021年4月24日、福山駅前シネマモードの主催で、濱口竜介監督を招いてZoom講座「映画の観方」が開催されました。

寝ても覚めても』(濱口竜介監督作品/2018年)について、
参加者の感想や質問に 濱口監督がコメントします。
監督との対話や、他の参加者の意見に耳を傾けることで、
一本の映画をとことん深堀する楽しさを体験してください。

というイベント概要を拝見し、是が非でも参加しなくてはと思い、早速応募しました。
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映画「寝ても覚めても」は、私が俳優 東出昌大さんを本格的に気にし始めるきっかけとなった作品でした。
公開から間もなく3年が経つ今、本作を題材とした場は、非常に貴重だと感じられました。
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今回は、書ききれない内容もあって惜しいとも思いながらも、私が特に好きな登場人物である「亮平」について語られた内容を中心に、レポを書いてみました。自分にとって大切な内容についてまとめることができたと思います。
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録音があるわけではないので、書かせていただく表現は、私というフィルターを通したものになるかもしれませんが、ご了承いただければ幸いです。

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私にとっての「映画の観方」

私が本作から学んだ「映画の観方」は、登場人物の人生に想いを馳せることでした。
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東出さん演じた丸子亮平
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東出さん演じた「丸子亮平」は、とても優しく人懐っこい青年です。監督は本講座内で、亮平は快活ないいお兄ちゃんであると述べられています。彼の優しさや懐の広さを見せるシーンが続きますが、ヒロインの裏切りにより、まるで人が変わったような怒りと失望を見せます。
そういったシーンの最後では、一度は飛び出していったヒロインを受け入れる。
一筋縄ではない人物像に、私は生き生きとした血肉と、120分の映画の前後に続く人生を感じました。
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濱口監督は、キャラクターが生きているような映画を作りたいとおっしゃられました。
この映画の、前にも人生があって、後にもある、そういった作品を作られたい、と。
まさしく私はその術中に嵌り、人物に魅せられたと言えるでしょう。 

監督への質問「裏設定について」

私は、この貴重な機会を利用して、作中に直接描かれていない、いわゆる裏設定について監督に尋ねたいと思いました。
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人物それぞれの人格と人生がありありと浮かんで見える本作ですが、脚本や演出の際に、監督はそういった要素をどこまで作られているのか?
例えば、原作者柴崎さんからは麦が実は宇宙人であるというエピソードがありましたが、一方、亮平には何か裏設定はありますでしょうか?
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監督は「サブテキスト」というものを出演者に渡されていたとお話されました。
この「サブテキスト」とは架空のインタビューシートだそうです。それぞれの人物がどこか知らない場所に呼び出されて、架空のインタビューをされた、というような内容。
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そこには、「幸せですか」「どういうことが好きですか」というような、履歴書とは違うような、人物が立体的になるような文章が載っていたそうです。
ちなみに作中には描かれなかったものとして、亮平には弟がいて、弟と喧嘩したというエピソードが描かれていたとのこと。*3

ちなみに、亮平と同じく東出さんの演じられた鳥居麦のサブテキストは、何も書けなかったそうです。
そのため、麦は、東出さんが思うように演じられていたと言います。
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前述の、原作者柴崎友香さんによる「麦=宇宙人」という裏設定は、柴崎さんが撮影現場に見学に来られたときに明かされたそうで、監督もそれにすごく納得されたと仰せでした。

朝子と亮平は、あの後どうなっていくのか

ヒロイン朝子は、5年交際した婚約者の亮平を振り切り、過去に熱い恋愛をした麦と逃避行に出る。そして一夜明け、やはり亮平の元に戻っていく。亮平は戻ってきた朝子に激しい怒りをぶつけるが、家に迎え入れる。
そして、共に川を見つめるシーンで本作は終わっていきます。
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その後どうなっていくのか、というのは、観客誰しもが疑問に思うことではないのでしょうか。
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「俺はきっと一生、お前のこと信じへんで」と言った亮平の言葉に、本イベントのディレクターである岩本さんは、一生一緒にいることを想定した、亮平らしさの滲む台詞であるとコメントされました。
それに対して濱口監督も、一生というセリフには、亮平って優しいやつなんだという気持ちを込められたと言います。

濱口監督の語る「映画の観方」

最後に、本講座のサブタイトルにもあった、「映画をより深く見る観方、読解力を高める観方」ということを監督は語られました。

監督は、深く見るというのはどういうことなのかについて語られました。まず、単純に良い方法として、何度か見るということを挙げられました。
二回目以降の鑑賞は、一回目とは違う見方になるとおっしゃられました。
結末がどうなるかわかった上での鑑賞だから、作り手・語り手の目線が見えてくる、と。
二回・三回見たいような映画と出会えたらマスト、と監督はおっしゃられました。
何度も見ることが勉強になるそうです。

それから、共通の要素があるものを渡り歩いてみるのも良い方法であるとおっしゃられました。
同じ役者や同じ監督の作品を渡り歩くことによって、共通項が見えてくる、と。
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これはもちろん、私は今日初めて聞いたことです。
しかし、知らず知らずのうちに、私は「寝ても覚めても」とそういった向き合い方をしていました。
初見時には、ヒロイン朝子の行動に混乱が止まりませんでした。どうにか他人の意見を聞きたくて、何人か知人を誘って観に行って、劇場では5回ほど見たと思います。

そして、冒頭でも言ったように、私は本作をきっかけに、俳優 東出昌大さんのファンになり、東出さんの出演作を中心に渡り歩いて観るようになりました。
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寝ても覚めても」という作品は、私に「映画をより深く見る観方、読解力を高める観方」を教えてくれた作品であったに違いありません。

余談 キャラを愛でるということ

私は元々、マンガやアニメなど、二次元作品の「オタク」です。
特定のアニメ・漫画の登場人物にハマって入れ込み、グッズを集めたりイラストを描いたり、ゆかりの地を訪ねる聖地巡礼をしたり、そういったハマり方を従来からしていました。
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そのため、いわゆる映画の登場人物に対しても、同じような目を向けることがあります。
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私はもちろん、東出さんという俳優さん・タレントさんは好きです。
でも、「丸子亮平」という彼の演じたキャラクターは、また違う意味で好きなんです。*4
ドラえもんに例えると、ドラえもんは好きだけど、その声を演じている大山のぶ代さんのことはそれほどでもない、と感じることもあると思います。そういった感覚に近いと言えるでしょう。
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映画作中で、朝子のルームメイトだったマヤは、出会ったときから亮平にかすかな好意を寄せていました。私が亮平に向ける好意は、その感覚に近いのかもしれない。
自分が付き合ったり結婚できたりといった立場ではないけれど、朝子を見つめる横顔が格好いいと思う。あんな風に悲しむ姿は見たくないと思う。幸せでいてほしいと思う。
このように私は、ひとりの傍観者として、「丸子亮平さん」という作中人物のことを想っています。
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ここまで入れ込んだのは、役者 東出昌大の力量、そして濱口竜介監督による緻密な作り込みによるものに他ならない、と確信できたひと時でした。
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*1:https://www.instagram.com/netemosametemo_movie より写真引用

*2:映画作中より引用

*3:柴崎さんによる原作小説内では、亮平は一人っ子であると書かれていたそうですが、私にとっては映画と小説は全くの別作品なので、気になりませんでした

*4:オタク用語でいうところの、クソデカ感情こじらせオタクというやつ

*5:猫が「寝ても覚めても」撮影現場でゴロン、NGテイクに東出昌大も笑顔(動画あり) - 映画ナタリー より引用 https://natalie.mu/eiga/news/298574